施設訪問の経験を経て、T.Aさんは「もっと患者さん一人ひとりに向き合いたい」と強く思い、個人宅訪問へとキャリアをシフトしました。同じ訪問薬剤師でも、仕事内容ややりがいは大きく変わります。この記事では、T.Aさんの実体験をもとに、施設と個人宅の違い、求められるスキル、そしておとどけ薬局で見つけた新しい働き方をご紹介します。施設訪問から個人宅訪問へ|転職を決めた理由施設での訪問薬剤師としての経験はやりがいもありましたが、T.Aさんにはずっと心に引っかかっていたことがありました。患者さんにもっと寄り添える仕事をしたいという想いが、個人宅訪問の薬剤師になるという決断につながったのです。「薬を届けるだけ」で終わらせたくなかった前職では全国展開する薬局で施設訪問を中心に活動していました。多職種連携の中で患者さんを支えるやりがいはあったものの、服薬管理の多くは看護師さんや介護職の方が担い、薬剤師が直接患者さんと関わる時間は限られていました。気づけば「薬を運ぶだけ」に近い感覚があり、このままでは物足りないという思いが強くなっていきました。個人在宅は患者さんとの距離がぐっと近づく仕事もっと深く関われる在宅医療を求めて選んだのが個人宅訪問でした。現場に出てみると、患者さんが自分で薬を管理するケースも多く、生活の背景を知ったうえでサポートが必要になる場面がたくさんあります。患者さん本人から「ありがとう」「助かったよ」と言われる瞬間が増え、薬剤師という存在が生活の一部になっていると感じられるようになりました。個人宅訪問で見える景色|施設とこんなに違う施設から個人宅に移ったことで、日々の仕事の景色ががらりと変わりました。患者さんとの関係の深さ、現場での判断力、多職種とのやり取りまで、現場に立って初めて知った違いがあります。「毎日来てほしい」と言われる関係性が築ける施設では限られた時間で多くの患者さんに対応するため、一人にかけられる時間はごくわずかです。個人宅では担当制で長期的に関わるため、体調や生活の小さな変化まで見守ることができます。「毎日でも来てほしい」と言われるほどの信頼関係が築けるのは、この働き方ならではの魅力です。その場で判断し動く力が鍛えられる訪問先で予期しない状況が起きることもあります。残薬が思ったより余っていた、急に体調が変化したといった時にその場で判断し、行動する力が必要です。施設のようにすぐに他スタッフへ相談できない場面も多く、自分の経験と知識を総動員して最善を導き出す力が磨かれます。家族・多職種と日常的に向き合う現場感患者さん本人だけでなく、ご家族、ケアマネジャー、医師などとのやり取りが日常的に発生します。限られた時間の中で情報共有や調整を重ね、最善の方法を探る連携力が必要です。生活の一部に深く入り込む感覚があり、医療人としての責任とやりがいを改めて実感できます。個人宅訪問で求められるスキルと役割個人宅訪問では、施設とは違う形で薬剤師の力が問われます。生活に直結するサポートから高度な医療対応まで、幅広いスキルが必要です。生活に寄り添う服薬支援の工夫患者さんが無理なく服薬できるよう、カレンダーを使った整理、一包化の工夫、残薬調整などを行います。生活のリズムやご家族の負担も考え、最適な方法を一緒に見つけていくことが重要です。単なる薬の受け渡しを超えたサポートが求められる現場です。医療用麻薬や終末期ケアなど高度なケース対応終末期の患者さんや医療用麻薬を使用するケースでは、変化する体調を見極め、医師と連携しながら安全に薬を管理します。経験や知識を深めるほど、患者さんやご家族に安心を届けられる責任のある仕事です。訪問ルート設計から報告まで幅広い裁量を担う担当制・エリア制の下、自らスケジュールを組み、調剤から訪問、報告までを一貫して担います。考えることは多いですが、その分主体性を発揮でき、責任を持って動けるため、やりがいがあります。「おとどけ薬局」だから叶う働き方の自由度T.Aさんが個人宅訪問を続ける理由のひとつは、働きやすさです。おとどけ薬局ならではの自由度の高さが、現場に集中できる環境を作っています。ルールに縛られず、現場の意見が反映される環境以前の職場では服装や靴の色まで細かく決まっていましたが、今は現場のメンバー同士でより良い方法を話し合い、柔軟に体制を作っています。患者さんにとって良いと思える働き方を自分たちで選べる自由が、モチベーションを大きく高めてくれます。チーム分担があるから訪問に集中できる在庫管理や事務作業は他部署が担うため、薬剤師は訪問と患者対応に全力を注げます。雑務に追われず、判断や提案に集中できるこの環境は、質の高い在宅医療を届けたい人にとって大きな魅力です。これから訪問薬剤師を目指す方へ施設での経験を生かしながら、もっと責任を持って患者さんに寄り添いたい。そんな方にこそ、個人宅訪問というフィールドを知ってほしいとT.Aさんは話します。施設経験は確かな土台になる施設訪問で培った多職種連携やスケジュール管理、報告書対応の経験は個人宅訪問でも強みになります。これまでの知識や経験を土台に、新しいステージへ踏み出すことができます。施設で学んだ基礎知識は、すべて個人宅訪問で大いに生かせるはずです。個人宅訪問はキャリアの次の一歩になる一人で判断し、患者さんの生活に深く関わる経験は、マネジメントや教育など次のキャリアにも直結します。「もっと患者さんに寄り添いたい、やりがいを感じる仕事をしたい」という思いを叶えられる選択肢が個人宅訪問です。