日本では在宅医療が地域医療の重要な柱として発展してきました。おとどけ薬局はその実務モデルを強みに、昨年から学会発表に積極的に取り組んでいます。今回、韓国の大学で発表する機会を得た背景には、日本の学会で在宅医療の研究を進める教授と出会い、その縁がアジア各国の医療界へつながったことがあります。韓国や台湾をはじめ、高齢化が急速に進む地域では日本の在宅医療に対する関心が高まっており、今回の登壇もこうした潮流の中で実現しました。日本の在宅薬局モデルを韓国へ紹介今回の発表で最も注目を集めたのは、日本における在宅薬局の実務そのものです。韓国には「在宅専門薬局」という概念がほとんど存在せず、2060年には世界でも上位の高齢化率に達すると見込まれています。この状況を踏まえ、おとどけ薬局は訪問件数、日常業務、患者対応の流れといった実務の全体像を紹介しました。さらに TikTok を用いた広報など、ICT 活用についても具体例を交えながら説明したところ、韓国側からは「制度整備前に知るべき内容」として高い評価が寄せられました。韓国の学生・医療者から寄せられた反応会場には学生を中心に約50〜60名が来場し、日本の在宅薬局がどのように動いているのかについて強い関心が寄せられました。実務のリアルがわかる内容は特に注目を集め、医療従事者からは「在宅モデルの理解が深まった」「ICT 活用の工夫は自国でも取り入れられそうだ」といった声が上がりました。発表の冒頭で紹介した韓国語版 TikTok も好意的に受け止められ、日本の薬局の取り組みが想像以上に関心を集めていることが明らかになりました。韓国の医療制度と薬局が抱える構造的課題韓国の医療保険制度は日本と近い仕組みを持ちながら、訪問薬剤管理の点数体系はまだ整備されていません。高齢者数が日本ほど多くないため制度整備の優先度がこれから高まる段階にあり、在宅薬局の仕組みは発展途上です。薬剤師が「一人につき一店舗のみ」しか所有できないルールも特徴で、チェーン展開が難しいため DX 化や設備投資が進みにくい構造があります。調剤報酬が低く、OTC 販売が主な収益源となっている点も日本との大きな違いです。こうした制度状況により、在宅医療体制の導入において日本の実務経験は参考にしやすく、具体的なモデルとして期待される側面があります。現地視察で見えてきた韓国薬局の特徴現地で薬局を視察した際には、日本とは異なる多くの特徴が確認できました。調剤の約9割がボトル文化で、ヒート薬は少ない一包化はほぼ全患者に実施されるが、加算がなく無料対応在庫棚は斜め陳列の可動棚で、見える化が徹底OTC 比率が高く、美容・サプリ・ペット向け商品が豊富予約・管理アプリなどの DX ツールは未発達投薬時の対面説明は日本と近いものの、制度や業務フローは大きく異なり、在宅医療を導入する際に日本の経験値がそのまま活かせる余地が大きいと感じられました。人口動態から見える韓国の未来課題韓国は 2060 年頃に日本を上回る超高齢社会へ突入すると予測されています。人口の半数がソウルに集中し、タワーマンションが主流となっている居住環境では、訪問動線が複雑化する可能性があります。一方で、一包化がすでに文化として定着しているため、在宅医療導入時の運用は日本より移行しやすい側面もあります。制度や DX の基盤が未整備な現状では、日本型モデルをそのまま参考にできる可能性が高く、アジア圏における在宅医療の共通課題が浮かび上がってきました。韓国での発表を通じて得た視座今回の発表を通して、おとどけ薬局はあらためて日本の在宅薬局モデルが国際的に見ても先行していることを実感しました。韓国の学生や医療従事者が日本の知見を求めていることは大きな励みであり、在宅医療が国境を越えた共通テーマであることを強く認識する機会となりました。また、SNS を通じたつながりが海外との新しいネットワークを生み、台湾・中国・東南アジアなど高齢化が進む地域にも同様の関心が広がる可能性も感じられます。外国籍薬剤師の日本での就労が増えれば、国際的な知識循環が生まれる未来も期待できます。おとどけ薬局のグローバル展望アジアで高齢化が一気に進む今、日本の在宅薬局には海外に届けられる価値があります。おとどけ薬局はまず国内で実務モデルの標準化と品質向上に取り組みつつ、「丁寧さ」や「気遣い」といった日本ならではの在宅サービスを海外へ伝える活動を広げていきます。韓国での発表をきっかけに、学会・大学との連携、多国籍薬剤師との協働など、国境を越えた取り組みをさらに進め、アジアの在宅医療発展に貢献していく方針です。